成果報告 Achievements

  • 平成24年度の成果

  • (1) 物理選別技術の高度化

    物理選別技術については、物理選別グループを組織し、廃電子機器や電子基板等の破砕技術および破砕後分離した部品や破片の選別する技術について検討および研究を開始しました。

    • 破砕技術

      電子基板およびデジタルカメラ、携帯電話等の小型家電は、天然の鉱石や岩石と異なり、種々の形状や大きさの異なる部品が板状の基板に取り付けられていることから、その破砕には従来の機械的な破砕機では個々の部品の分離ができなかったり、過度の粉砕が生じたりする問題が生じます。これらの問題に対して、種々の破砕方法を調査・検討した結果、各粉砕方法によって図1に示すような特徴があることが判りました。

      基板の破壊パターン

      図1 基板の破壊パターン

      これらの結果から、廃電子機器の破砕に対しては「電気パルス粉砕」を取り上げ、実基板による破砕を調べました。

      電気放電による破砕技術は以前より研究されてきましたが、最近のパルス発生技術および制御技術の進展により大きく進歩しつつあり、廃電子機器の破砕についても、その適用を検討できる段階に至りつつあります。
      その電気パルス粉砕には図2に示す二通りがありますが、本装置の破砕原理は図2(b)に示すED方式であり、この現象の詳細な機構を解明することも次年度以降の重要な課題です。

      電気パルス破砕の原理

      図2 電気パルス破砕の原理

      昨年度は装置導入の傍ら、廃電子基板の破砕を試みましたが、その結果、金属部分近傍の選択的な破壊、小型部品の非破壊状態での剥離現象が確認できました。その一例を写真1に示します。

      電気パルス破砕による電子基板の粉砕の例

      写真1 電気パルス破砕による電子基板の粉砕の例

      今後、導入装置により体系的な試験を実施する予定です。
      また電気パルス破砕の原理解明に関しても、今回導入した「微小領域X線回折測定装置」も用いて破面の解析をすることにより破壊挙動の研究を実施する予定です。

    • ソーティング技術

      破砕後に生成する破砕物を、含まれる成分により効率よく選別するソーティング技術について、本プロジェクトでは、ソーティングのための迅速分析技術、ソーティング制御ソフト及びエアジェット等を用いた選別技術の開発を目指すことにしております。
      昨年度は、その内のソーティングのための迅速分析技術の動向について調査をしました。その結果、迅速に分析できること、位置制御が容易であること、大量処理が可能であること等の点で、レーザー誘導発光分析技術(LIBS:Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)が最適との結論を得ました。今後は欧州での開発状況についてさらに詳細な調査を行うとともに、レーザー発振・分光分析技術の検討を行います。

  • (2)新規化学精製基盤技術の確立

    分離した破砕物から目的とする元素を精製する化学精製技術について、その基盤研究を開始しました。従来、多くのレアメタル精錬に用いられている溶融塩電解プロセスに代わる新しい精製技術の開発のために、プロジェクト前半では広く新規シーズを探索するため、基盤研究を行っています。昨年度はイオン液体を利用した電解技術の研究、高効率は抽出を目的とした新しい抽出剤の研究、溶融塩電解法の高効率化技術について調査研究を行い、研究機器の整備を行いました。

    • イオン液体に関する基礎研究

      イオン液体は常温で金属イオンを選択的に溶解することから、活性なレアメタルの抽出に効果的と考えられています。このようなイオン液体の開発に際して、基礎研究として安価なイオン液体の合成、金属イオンを含む水溶液とイオン液体間の分配係数、水の溶解度の評価、金属イオンの選択性の評価、電解での安定性評価、電気伝導度等の物性評価が必要となりますが、昨年度はこれらの内、新イオン液体の合成、水およびレアメタルイオンの溶解度評価等について研究を行いました。新イオン液体の合成としては複数の研究室で抽出用のイオン液体の合成を行い、今後、評価を行う予定です。またイオン液体はレアメタルイオンを含む水溶液から抽出を行う為、水分による安定性が重要になりますが、そのために、イオン液体への水の溶解度を一次的に評価する目的で第一原理計算によるシミュレーションに着手しました。昨年度はそのシミュレーション方法を確立し、Br-イオンを含むイオン液体の場合には水分子との結合が強くなり、その分極効果で水分子が次々に結合すること、またNTf2-イオンの場合にはこのような結合が見られないこと、等を確認しました。

    • 新規抽出剤の基礎研究

      新規抽出剤については、新規TC4A誘導体の合成を行いPt,Pdの抽出で高選択性、高効率性を示すことが確認されました。

    • 溶融塩電解の基礎研究

      従来のハロゲン化物溶融塩電解に代わる溶融塩電解を開発する目的で、溶融塩の構造や拡散係数等の物性評価に用いるために、高温NMR(核磁気共鳴分析装置)を導入しました。

  • (3)応用技術開発

    上記の物理選別や化学分離での研究結果を反映した全体プロセスの技術開発を行うため、昨年度は従来技術の延長線上で問題となる課題解決に向けて、その研究を行いました。

    • 電解技術

      ハロゲン系溶融塩に代わる技術として、フッ化物-塩化物系溶融塩系およびアルカリ土類含有溶融塩系を利用する電解技術の研究に着手しました。
      また、レアメタルの電解で課題となる平滑電析について、その溶融塩の影響や電極表面での電析状態の調査に着手しました。

    • 応用研究

      ・ネオジム磁石のリサイクルの研究
      ・廃基板に含まれるハロゲン含有プラスティックに含まれるBr系難燃材と金属の有効利用
      ・自動車触媒からのPGM回収
      の研究を行いました

  • (4)希少元素精錬に関わる計算科学

    物理選別、化学分離、応用技術開発の各研究課題を計算科学から支援するために、昨年度はイオン液体の電解時に課題となる水の溶解度に関連する、イオン液体中の水の挙動に関するシミュレーション法を確立し、(C2H28N3O3)-でBr-イオンおよびNTf2-イオンから成る2種類のイオン液体の水和性の違いを検証することが出来ました。

  • (5)希少元素精錬に関わる構造解析技術

    目的金属を単体で精製・分離するためには溶融塩電解およびイオン液体の電解が重要ですが、そのために溶融塩およびイオン液体の構造や拡散速度等の測定が必要で、そのために本プロジェクトではNMR解析による手法を導入し、高温でのこれらの測定技術や解析技術を開発することとしております。昨年度はそのための装置を検討し、導入のための仕様を決定し、機器の設置を完了しました。